技−デジタル復元技術

赤外線撮影

  「見えないものを撮る」事の代名詞の様に思われていますが、しかし実は万能ではありません。

 赤外線は赤色より外側にあり、波長の長い光で、写真としては700nmから1400nmの範囲と言われますが、長い間赤外線フィルムと呼ばれる特殊なフィルムにより記録されてきました。
しかしながら、その赤外線フィルムで写せる赤外域は750nm前後まででしたが、現在のデジタルカメラのCCDは、実は赤外線フィルムより幅の広い情報を記録できます。

しかしながら赤外線画像は、ピントの位置が可視光線と違い、画像のピントを甘くしてしまいます。ですから、市販されているデジタルカメラでは、赤外線域をカットするフィルターが内蔵されています。
 逆に赤外線写真として撮影するには、「可視光線域」をカットしないと撮影できません。
ましては赤外域は可視域に比べ、同じ画素数の画像であっても、解像度が悪くなります。しかも、波長が長くなるにつれて、解像度も極端に悪くなります。

と、ここまでは(資)文化財復元センターの説明と同じですが、何故赤外線で消えた文字が見えるのか?

まず、赤外線で撮られたモノクロの風景写真をご覧になると判りますが、赤外線と可視光線とは写り方が少し違って、赤外線は「反射」するか「透過」するかと言う、性質が大きく二つに分けられます。

ですからコントラストが高く、木々の緑はほとんど赤外線を反射して「白く」写りますが、青空は赤外線を透過させるので「黒く」写ります。ただ透過率はモノにより違いますが、墨の成分である「炭素」は赤外線を透過させるので、「黒く」写ります。

つまり黒いものが黒く写ると言うことと、少し意味が違いますから、人間の目にはみえないものであっても、赤外線を透過させる性質のものは、画像として記録されます。

そして、もう一つの特徴としてX線ほどでは有りませんが、赤外線は薄いものを透過させる性質もあり、表面上は見えないもので、中に隠れているものを写し出す事も有ります。

その最たるものが、遺跡から発掘された「木簡」と呼ばれる板に書かれた文字なのですが、これは比較的くっきりと読めることがあります。理由は、土中に長い年月埋まっていれば、水分を多く含んでいることが考えられ、もともと板の表面に書かれていた墨文字は、木の繊維の中へ中へと浸透して行き、表面上は文字が見えにくくなります。

しかし、板の内部には炭素が残っていて、しかも赤外線は薄いものを透かしてしまい、内部の炭素を黒々と写しだします。しかも板は、水分を含むと見た目は結構濃い茶色になるのですが、赤外線では見た目ほど濃く写りません。

ところが、埋蔵ではなく、空気中に放置された墨文字、しかも風雨に晒された絵馬などで、表面がボロボロに絵の具が剥げたり、墨文字が薄くなったものは、これは木の繊維に浸透したのではなく、雨などにより洗い落とされたものと考えられ、板の内部に炭素が残っていることはあまり考えられません。

しかも、埋蔵物に比べ、表面には「汚れ」が付着し、その成分によっては、板面そのものも赤外線では黒っぽく写ることがあり、結果としては木簡ほど赤外線撮影の効果が現れないことが多くあります。

 

現 状

赤外線画像

復元画像

本来「赤外」あるいは「紫外」域には「色」と言えるものはありませんから、画像として写すことは出来ても、その画像から「色」を判断することは出来ません。

 赤外線写真を撮るには、光源に「赤外線」が含まれていないと写真を撮ることは出来ません。つまり、その光源である赤外線を、反射するか透過するかが、写真として記録されるわけです。

その光源としては単純に考えると「赤外線ライト」と呼ばれるものがベストなのですが、これは可視光線をカットして、赤外線だけ発するものですが、しかし赤外線写真を撮るには、レンズ側に「赤外線フィルター」をつけないといけません。

つまり、赤外線フィルムもCCDも、実は「可視光線」+「赤外線画像」を記録できますが、可視光線をカットしない限り、赤外線域は画像として見えてきません。そのために「可視光線」をカットするためのフィルターを掛けるのであって、照明そのものは可視光線を含んでいても問題ありません。

 一番簡単なのは「太陽」で、その次は「タングステン電球」と言うことになりますが、生憎「蛍光灯」は赤外線をほとんど含んでいません。

 
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